母のまなざし2
面談をしていて、クライエントの小さい頃のことを、あまり覚えていない母親のことを聞くことが
ある。母親は当時、忙しく、祖母や伯母・叔母等に子どもの世話を任せていたのである。
ある時、上記とは別の事例で、母親自身にクライエントの幼児期について尋ねたことがある。
私は「○○さんを、何歳から保育園に入れましたか」と尋ねた。母親は「それが、覚えていないん
です」と答えた。
この2例とも、子どもが母親の目に充分映っていなかったということになる。母親の関心が
何かの原因で他に向いていたのである。母親にとっては色々な理由があって、したくても
子どもの世話ができなかったということだが、幼い子どもは大人のような認識はできない。
充分まなざしを向けてくれない、世話をしてくれない母親に接し続けて、子どもは「お母さんは
私のことが嫌いなんだ」「私は嫌われている」という文脈を作ってしまう。
こうなると子どもは自分のことを好きになることが困難になる。そして他者を好きになることも
困難になる。この傾向は成人し結婚後も尾を引くことになる。そこで何らかの問題が発生し
セラピーが要請されるのである。
お母さんの眼の中に子どもがどう映っていたか。事例に接するたびに、このことがとても
大切なことだと思える。